チームのレジリエンスを高めるコミュニケーション術~危機を乗り越え、強くしなやかな組織へ~

目次

はじめに:なぜ、今、チームのレジリエンスが問われるのか?

現代ビジネス環境は、予測不能な変動、不確実性、複雑性、曖昧性(VUCA)が常態化しています。市場の変化、技術革新、競合の動向、さらには予期せぬパンデミックや自然災害など、企業を取り巻く環境は常に変化し、予期せぬ困難が襲いかかります。

このような時代において、個人のレジリエンスはもちろん重要ですが、それ以上に組織として危機を乗り越え、持続的に成長していくためには、「チームのレジリエンス」が不可欠です。チームのレジリエンスとは、個々のメンバーのレジリエンスの総和だけでなく、チーム全体が逆境に直面した際に、しなやかに対応し、回復し、むしろその経験を通じて結束を強め、学習し、進化していく能力を指します。

しかし、チームのレジリエンスは自然と高まるものではありません。特に重要なのが、「コミュニケーション」です。危機的な状況下では、不安やストレスからコミュニケーションが滞ったり、誤解が生じたりしやすくなります。本コラムでは、チームのレジリエンスを高めるために不可欠なコミュニケーション術に焦点を当て、具体的に何をすべきかを探っていきます。

チームのレジリエンスとコミュニケーションの関係性

チームのレジリエンスが高い状態とは、以下のような特徴を持つチームです。

  • 情報共有が活発: 危機時でも必要な情報が迅速かつ正確に共有される。
  • 心理的安全性が高い: メンバーが恐れることなく意見を言える、助けを求められる。
  • 相互支援の文化: 困っているメンバーがいれば、自然と手を差し伸べられる。
  • 共通の目標と連帯感: 困難な時こそ、チームとしての一体感が強まる。
  • 柔軟な意思決定と実行: 変化に対応し、迅速に意思決定を行い、実行に移せる。

これらの特徴は、全て効果的なコミュニケーションによって支えられています。コミュニケーションが不足したり、質が低かったりすると、チーム内に不信感が生じ、情報共有が滞り、結果としてチームのレジリエンスは低下してしまいます。

チームのレジリエンスを高める5つのコミュニケーション術

それでは、具体的にどのようなコミュニケーションを意識すれば、チームのレジリエンスを高めることができるのでしょうか。ここでは、明日から実践できる5つのコミュニケーション術をご紹介します。

コミュニケーション術1:心理的安全性の高い対話を促進する

チームメンバーが安心して意見を述べたり、失敗を報告したり、助けを求めたりできる環境、それが「心理的安全性」です。心理的安全性が低いと、情報が隠蔽されたり、問題が早期に発見されなかったりするため、チームのレジリエンスは大きく損なわれます。

  • 実践方法:
    • リーダーが率先して弱みを見せる: リーダー自身が「分からないことは分からない」「私も失敗する」といった姿勢を示すことで、メンバーも安心してオープンになれます。
    • 傾聴と共感: メンバーの発言に対して、頭ごなしに否定せず、まずは最後まで耳を傾け、感情に寄り添う姿勢を見せます。「それは大変だったね」「そう感じたんだね」といった共感の言葉を伝えることで、相手は「理解されている」と感じます。
    • 質問を奨励する: 疑問点や懸念事項があれば、どんな些細なことでも質問することを奨励します。質問しやすい雰囲気を作ることで、問題の早期発見に繋がります。
    • 失敗を学びの機会と捉える: 失敗を責めるのではなく、「この失敗から何を学べるか?」という視点で振り返りを促します。失敗は成功のもとであるという文化を醸成します。

コミュニケーション術2:危機時の「透明性の高い」情報共有を徹底する

危機的な状況下では、不確実性が高まり、メンバーは不安を感じやすくなります。このような時にこそ、リーダーは透明性の高い情報共有を徹底し、現状を正確に伝える必要があります。良い情報だけでなく、課題や懸念事項も包み隠さず共有することで、メンバーは状況を正しく理解し、連帯感を持って対応できるようになります。

  • 実践方法:
    • 定期的な進捗共有: 週次や日次など、定期的かつ簡潔に進捗状況、課題、今後の見通しを共有する場を設けます。
    • 「なぜ」を伝える: 何か変更があったり、新しい方針が出されたりした際には、その「なぜ」を明確に伝えます。背景を理解することで、メンバーは納得感を持って行動できます。
    • 情報の一元化: 必要な情報がどこにあるかを明確にし、誰でもアクセスできるように情報共有ツールなどを活用します。
    • 質問への迅速な対応: 共有された情報に関する質問には、可能な限り迅速かつ丁寧に回答します。

コミュニケーション術3:相互支援を促す「感謝」と「承認」のコミュニケーション

困難な状況では、メンバー一人ひとりの負担が増大しがちです。このような時こそ、互いに支え合い、感謝し、承認し合うコミュニケーションが、チームの結束力を高め、レジリエンスを強化します。

  • 実践方法:
    • 「ありがとう」を言葉にする: 助けてもらった時、協力してもらった時は、意識的に「ありがとう」と具体的に言葉で伝えましょう。
    • 行動を具体的に承認する: 「よくやったね」だけでなく、「〇〇さんが〜してくれたおかげで、〜という成果が出たね。素晴らしい!」のように、具体的な行動とその成果を紐付けて承認します。
    • 小さな貢献も見逃さない: 目立ちにくい貢献や、日常的なサポートにも目を向け、積極的に承認の言葉をかけましょう。
    • フィードバックの文化: ポジティブなフィードバックを積極的に与え、互いの成長を促す文化を醸成します。

コミュニケーション術4:ポジティブな未来を「語り合う」ビジョン共有

危機的な状況では、ネガティブな情報に意識が向きがちですが、そのような時こそ、チームでポジティブな未来像を語り合うことが重要です。共通のビジョンや目標を再確認し、それを達成した時の喜びを共有することで、メンバーのモチベーションを高め、困難を乗り越えるエネルギーを生み出します。

  • 実践方法:
    • ビジョン・ミッションの再確認: チームの存在意義、目指すべき方向性を定期的に話し合い、メンバー全員で腹落ちさせます。
    • 目標達成時のイメージ共有: 「この困難を乗り越えたら、どんな未来が待っているか?」を具体的にイメージし、共有します。
    • 成功体験の共有: 過去にチームで困難を乗り越えた成功体験を共有し、チームの強さや可能性を再認識します。
    • 希望を鼓舞する言葉: リーダーは、常に前向きな姿勢でチームを鼓舞し、希望を与える言葉を発信し続けましょう。

コミュニケーション術5:対立を恐れず、「建設的な議論」を行う

チーム内で意見の対立や衝突が生じることは、健全なチームであれば自然なことです。重要なのは、その対立を避けたり、感情的にぶつかり合ったりするのではなく、「建設的な議論」を通じて解決策を導き出すことです。異なる意見から新しいアイデアが生まれることも多く、対立を恐れない姿勢がチームのレジリエンスを高めます。

  • 実践方法:
    • 「I(アイ)メッセージ」で伝える: 相手を非難する「You(ユー)メッセージ」(例:「あなたは〜すべきだ」)ではなく、「Iメッセージ」(例:「私は〜だと感じる」「私は〜してほしい」)で自分の意見や感情を伝えます。
    • 意見と人格を分離する: 意見の対立は、人格の否定ではないことを意識します。相手の意見と、その人自身を切り離して考えるようにしましょう。
    • 目的を明確にする: 議論の目的は「より良い解決策を見つけること」であることを常に意識し、感情的になりそうになったらその目的に立ち返ります。
    • ファシリテーターの存在: 必要であれば、中立的な立場のファシリテーターを立てて、議論が建設的に進むようサポートします。

まとめ:コミュニケーションが、チームの未来を創る

チームのレジリエンスを高める上で、コミュニケーションはまさにその生命線と言えます。心理的安全性の確保、透明性の高い情報共有、相互支援の促進、未来を語り合うビジョン共有、そして建設的な議論の実施。これら5つのコミュニケーション術を意識的に実践することで、あなたのチームはどんな困難にも立ち向かえる、強くしなやかな組織へと変貌を遂げるでしょう。

個人のレジリエンスだけでは乗り越えられない壁も、チームが一丸となってコミュニケーションを取り、協力し合うことで、必ず突破できます。危機を単なる「ピンチ」として終わらせず、チームがさらに成長するための「チャンス」に変えていきましょう。

マナビポップ株式会社では、社員一人ひとりのレジリエンス向上はもちろんのこと、チーム全体のレジリエンスを高めるためのコミュニケーション研修もご提供しています。実践的なワークやロールプレイングを通じて、チーム内での効果的なコミュニケーションを促し、相互理解と協調性を深めることで、真に強いチームを構築するお手伝いをいたします。

このコラムで「チームのレジリエンスとコミュニケーション」の重要性を感じた方は、ぜひ以下の研修プログラムページをご覧ください。あなたの組織の未来を、レジリエンスの力でより強固なものにしていきましょう。

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この記事を書いた人

職場の育成風土をつくる専門家。個人指導700名、のべ35,000名の指導実績がある。歯科医院、教育サービス業、建設業、清掃業、介護事業、飲食業、アパレル、保険、公立小中学校など業種業態問わず、1名から700名の研修・講演多数。「わかりやすく、即実践できる」をモットーに、学習塾で培った誰でも楽しく学べる教育スタイルには定評がある。マナビポップ株式会社代表取締役。

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